大人の世界はいろいろあるさ
前回に続き、川の水をホースで汲み上げて、蛇を触らせてくれた、おっちゃんの話。
僕はなんで川に水を汲んでたのか、不思議に思い聞いてみたら、顔をちょっぴり歪ませて、
「うん、まあ、あれだ、こうすっと、儲かんのさ」
僕はそれ以上聞くのをやめました。
おじさん、汲み取りの車からホース伸ばして、水吸い上げてたんだもんね。
ずるさも必要なんだろうな、僕はなるほどなと思いましたよ。
小さな子がそう思うわけない。そう思いますか、いえいえ、思うんですよ、実際。
田舎での暮らしは面白いことばかりだったんだけど、嫌なことありました。
野良犬がね、ホント多かった。いや野良犬じゃないのかな。普通に放し飼いされてましたからね、当時は。
駅から降りて家までの道、もうね、7,8頭はいましたね。怖くてね、僕が小さい頃、まあその頃も小さかったですが、さらに小さな頃、犬に太腿を噛まれて怪我したことがあって、それ以来、犬が怖くてたまりませんでした。
それ以来、母は、あいつら畜生だからな、何も考えてねえんだ。いきなりガブだからな、いつもそう言い、犬が心底嫌いになったようです。
猫も多くてね、引っ越した家の外には、当たり前のよう猫がいて、小さな縁側があったんだけど、そこに寝てたりしてましたね。
猫は皆大人しくて、触っても嫌な顔もしない。そんな猫をドンドン好きになっていきました。たまたま、そういう性格の猫だったんでしょうね。
そんな猫たちなんですが、嫌われ出していくんですねえ。
団地は庭がついていて、池を作るのが流行っていったんです。そして池といえば魚がつきもの。金魚だったり、鯉だったり。
それが夜になると、皆いなくなってしまう。猫が獲物にしちゃってたんです。
猫の居場所がなくなっていき、気づけば見なくなっていました。
そういえば、犬も減っていってたかもなあ。どんどん田んぼが減って、お百姓さんも、犬の放し飼いをしなくなってました。
家が増えて、放し飼いができなくなって行ったんでしょうね、きっと。